脱オタを掲げ、アニメや漫画を観るのを止めつつある僕だが、現状唯一読んでいるのが「鬼滅の刃」だ。

 今更説明するまでもないだろうけど、鬼滅の刃は大正時代の日本を舞台に、人を喰らう鬼と、鬼に家族を殺され、鬼になってしまった妹を戻す為に鬼と戦う主人公、炭治郎と仲間たちの戦いを描いた作品だ。

 ハードな物語に対し妙にシュールな登場人物の言動と、下手糞味のある絵が相まって独自の魅力を持っている作品だが、登場人物の言葉は僕のようなダメ人間には中々応えるものがあった。

 全てを拾おうとするとキリがないので、今回はアニメ化された6巻あたりまでから、僕に刺さったシーンを紹介したいと思う

生殺与奪の権を他人に握らせるな!!

吾峠呼世晴 鬼滅の刃 一巻

 

 炭焼きの家の息子である竈門炭治郎かまどたんじろうは、家族と共に貧しくも幸せに過ごしていたが、とある雪の日に炭治郎が仕事から家に帰ると、家族は人喰い鬼によって皆殺しにされてしまっていた。

 唯一息のあった妹の禰豆子ねずこは人喰い鬼に変わってしまっており、家族を死なせてしまった自分の不甲斐なさを嘆きながら禰豆子に正気を取り戻すよう訴える炭治郎だったが、そこに現れたのは鬼を狩る戦闘集団、鬼殺隊の精鋭、富岡義勇とみおかぎゆうだった。

 禰豆子に容赦なく刀を突きつける義勇に対し、炭治郎は土下座をしてでも許しを請おうとするが、そんな炭治郎を義勇は一喝する。

生殺与奪の権を他人に握らせるな!!
惨めったらしくうずくまるのはやめろ!! そんなことが通用するならお前の家族は殺されていない
奪うか奪われるかの時に主導権を握れない弱者が妹を治す? 仇を見つける? 笑止千万!!
弱者には何の権利も選択肢もない、悉く力で強者にねじ伏せられるのみ!!
妹を治す方法は鬼なら知っているかもしれない、だが、鬼共がお前の意思や願いを尊重してくれると思うなよ
当然俺もお前を尊重しない、それが現実だ

 

義勇に容赦ない言葉を投げかけられた炭治郎は絶望に打ちひしがれるが、義勇にはその苦しさがよくわかっていた。

 だが、時は戻らないし炭治郎に絶望している暇はない。

 家族を殺された怒りを原動力に立ち上がるしか、炭治郎に残された道はないのだから。

弱者に甘んじてはいけない

 今の僕はどうしようもない弱者だ。

 仕事は非正規、月の給料は二十万以下、三十過ぎたけど彼女もいないし貯金も殆どないと、何一つ強みと呼べるものがない。

 そんな僕にとっては成功を勝ち取った勝者の姿はとてつもなく眩しく感じるし、そんな強者がときに投げかける、弱者を切り捨て排除するかのような言葉に心を抉られ、自信を失うことも少なくない。

 ただ、このまま弱者に甘んじているわけにはいかないと思っている。

 

 社会のルールを作るのは強者だし、どこまで行っても結局社会は強者にとって都合のいいようにできている。

 弱者のままではいいように強者に利用されて搾り取られるばかりになってしまうし、権利を得ることも主張することも難しい。

 そしてそんな弱者としての立場は強者に噛みついたところで全く改善しない。

 ならば、たとえ弱くても自分なりに戦える方法を見つけて、力をつけて少しでも人生を奪われないように戦うしかない。

 僕が禁欲をするのも、筋トレをするのも、そしてこのブログを書くのも、そんな力を少しでも身につける為だ。

 義勇の言葉は現実を突きつけるが、同時に僕に戦う勇気を与えてくれるのだ。

鈍い、弱い、未熟、そんなものは男ではない

吾峠呼世晴 鬼滅の刃 一巻

 炭治郎と禰豆子の姿にただの鬼とは違うものを感じ取った義勇の口添えで、炭治郎は鬼殺の剣士を育成する育手そだての老人、鱗滝うろこだきに弟子入りすることになる。

 鬼殺の剣士になる為の最終選別に進むべく厳しい修行に励む炭治郎だが、一年が過ぎた頃、刀で巨大な岩を斬るという無理難題を鱗滝から課せられる。

 そしてその試練はそう簡単に上手くいく筈もなく、半年間成果が出せないままもがき続ける炭治郎の前に、錆兎さびとという狐の面を被った少年が現れる。

男が喚くな、見苦しい

どんな苦しみにも黙って耐えろ、お前が男なら、男に生まれたなら

鈍い、弱い、未熟、そんなものは男ではない

 炭治郎の不甲斐なさを一喝した錆兎は、手にした木刀で炭治郎に殴りかかる。 

お前は何も身につけていない、何も自分のものしていない

特に鱗滝さんに習った呼吸術、”全集中の呼吸”

お前は知識としてそれを覚えただけだ、お前の体は何もわかってない

お前の血肉に叩きこめ、もっと、もっと、もっと!!

鱗滝さんが教えてくれた極意を決して忘れることなどないように、骨の髄まで叩きこむんだ

進め!! 男なら、男に生まれたなら、進む以外に道などない!!

 錆兎に完膚なきまでに叩きのめされた炭治郎だったが、その強さは炭治郎に衝撃を与え、それから更に半年、炭治郎は不思議な少女、真菰の手ほどきを受けながら、来る日も来る日もボロボロになりながら錆兎に挑み続けるのだった。

男らしさに憧れる

 ある程度生き方の多様化が認められている現代においては、錆兎のマッチョイズムのような主張は少々時代錯誤のようにも感じてしまうが、それでもやはり男には男らしさ、力強さが求められる風潮が少なからずある。

 僕はそんな男らしさという概念を息苦しく感じてしまうことがあるものの、一方で鈍い、弱い、未熟という三拍子揃ったダメ人間なので、男らしさというものに強い憧れがあるのも事実だ。

 できれば男らしくありたい、強くなりたいとは考えているものの、ずっとなよなよした軟弱な人間として生きてきた自分には男らしさなんてものには程遠くて情けなくなるが、それでも泣き言を言っているわけにはいかない。

 仕事でも勉強でも趣味でも、覚えたことはとにかく身体を動かして実行し、反復を繰り返して身体に叩きこまなければ自分のものにするのは難しい。

 上手くいかなくてもひたすら自己鍛錬に励み、覚えたことを力に変えて強い男になる。

 憧れ過ぎて最近男らしさに歪んだコンプレックス抱きつつあるが、そんなこじれたコンプレックスを力に変えられるように努力を続けたい。

痛くても苦しくても楽な方へ逃げるな

吾峠呼世晴 鬼滅の刃 四巻

 最終選別をくぐり抜けて鬼殺隊の剣士になることができた炭治郎は、禰豆子を人間に戻す為に、鬼の首魁である鬼無辻無惨きぶつじむざんの手がかりを追って、任務に奔走していた。

 そんな炭治郎と成り行きで行動を共にするようになったのが鬼殺隊に同期入隊した少年、我妻善逸あがつまぜんいつなのだが、女性に目がなく初対面の女性に優しくされたのを自分に好意があると勘違いして泣きながら求婚したり、自分に自信がなく常に怯えていて事あるごとに死ぬなどのネガティブな発言を連発して泣き喚いたりと、善逸は面倒見のいい炭治郎ですら呆れてしまう程のヘタレで問題児だったのだ。

 

 鬼殺隊に入った理由も、女に騙されて貢がされた借金を肩代わりしてもらう代わりに育手である「じいちゃん」の弟子になり、気が付いたら最終選別を突破して入隊していたというなんとも締まらないものだった。

 だが、そんな情けなさを一番嫌っているのは他ならぬ善逸自身なのだ。

俺は、俺が一番自分のこと好きじゃない

ちゃんとやらなきゃっていつも思うのに、怯えるし、逃げるし、泣きますし

変わりたい、ちゃんとした人間になりたい

 任務の為に赴いた那田蜘蛛山で遭遇した蜘蛛の鬼によって、善逸は蜘蛛になる毒を打ち込まれて恐怖のあまり失神してしまうが、夢の中で善逸は、親もいなくて誰からも期待されず、厳しい修行に耐えられず何度も泣き喚いて逃げ出し、兄弟子からも蔑まれ、何一つ成し遂げられない自分の人生を嘆いていた。

 しかし、腐っても厳しい修行を超えて剣士になった善逸はここで終わらない。

 善逸は眠りに落ちた時に緊張から解放され、本来持っている力を全て発揮することができるようになるのだ。

泣いてもいい、逃げてもいい、ただ諦めるな

信じるんだ、地獄のような鍛錬に耐えた日々を、お前は必ず報われる

極限まで叩き上げ、誰よりも強靭な刃になれ!!

一つのことを、極めろ

 

 じいちゃんに教わった「雷の呼吸」には六つの型があるが、善逸は壱の型しか覚えることができなかった。

 だが壱の型をひたすら鍛え続けた善逸は、圧倒的な速さの居合切りで蜘蛛の鬼を撃破し、戦いに勝利する。

痛くても苦しくても楽な方へ逃げるな、じいちゃんにぶっ叩かれる

そうだ……炭治郎にも……怒られるぞ……

 

 辛勝した善逸は全身に毒が回って意識も朦朧としていたが、それでも諦めず力を振り絞る。

 そうじゃないと、厳しくとも自分を見捨てなかったじいちゃん、同期として自分を認めてくれた炭治郎に顔向けができないから……

どんなにつまづいても、やり遂げる大切さ

善逸はどうしようもないヘタレだし、六つある雷の呼吸のうち、壱の型しか会得できなかったりと、要領もよくない。

 それでも踏みとどまらなければならない一線では情けなくても踏みとどまって立ち向かう強さを持っている。

 それは善逸がじいちゃんというメンターに支えられながら、どれだけヘタレても諦めずに修行を続けたからだ。

 仕事が全くできず五年務めた会社をなんの成果も出せずに辞めてしまい、その後もどこの会社でも使えない奴と言われて逃げ続ける人生を送っていた自分には、ヘタレだけどやる時はやれる善逸が本当に羨ましい。

 三十路を超えてもこれといった取り柄のない僕がこれからなにかを成し遂げるなどそうそう簡単なことではないけれど、それでも諦めず、なにか一つでも成し遂げられるように、上手くいかなくても努力を続けたい。

まとめ

 鬼滅の刃は努力・友情・勝利という少年漫画の王道を詰め込みつつ、敵にも味方にも容赦のない、予想を裏切る展開の数々で見ているこちらを楽しませてくれる。

 既にジャンプ本誌での連載は最終決戦を終え、このままエピローグに突入するのか、それとも新章が始まるのかまだ判別がつかないが、終わってしまうと寂しいと思う反面、綺麗に完結して欲しいとも思ってしまうので複雑な心境だ。

 できればもっと早く、このドキドキをリアルタイムでを味わいたかったと後悔している

 鬼殺隊の剣士達は鬼を倒し、平和を守る為なら命の危険すら省みずに戦うが、その悲壮なまでの生き様は、平和な現代でダラダラと生きている僕には中々心を抉られるものがある。

 流石にこんなストイック過ぎる生き方は無理だが、僕も少しは今後の人生の糧にしなければと思う次第だ。

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